新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大は、日本における大学卒業式シーズン被ったことから大きな影響を与えました。大学生にとって、最後の晴れ舞台となる卒業式が中止になるなど、世間に大きな影響を与えたコロナショックは2020年だけではなく、来たる2021年においても影響をおよぼす可能性が考えられます。
今回は、新型コロナウイルスによって日本の大学における卒業式にどのような影響を与えるのかについて考察を加えます。
コロナショックによって急遽影響を受けた卒業式と新社会人デビュー
2020年2月から日本でも本格的に感染が始まった新型コロナウイルスは、3月に行われる大学の卒業式に多大な影響を与えています。
全国743校の大学に対する調査データでは、中止発表が456校(全体の61.4%)となっており、縮小開催が223校(全体の30.0%)と、コロナによって卒業式に影響が与えられた件数は全体の90%以上を占めています。最新のデータでは2019年3月度の大学卒業者数は約57万人であったことを考慮すると、約50万人以上が参加する卒業式に影響を与えていると考えられます。
加えて、また大卒者の就職率が78%(2019年度データ)を考慮すると、約44万人にもおよぶ新社会人の入社や業務にも影響を与えています。入社直前で内定取り消しが発生したことに加えて、入社式を中止にしてオンラインで受け入れを行うなどの取り組みは連日ニュースに取り上げられていました。
今回のコロナショックは卒業式への影響はもちろん、卒業生の社会人としての人生にも多大な影響をもたらしています。現時点では、リモートワークへの対応なども含めて、新社会人が可能な限りスムーズに仕事を進めていくための取り組みが進んでいます。
各大学の新型コロナウイルス対策状況
ここでは、実際にコロナショックによる各大学の卒業式への影響をまとめてお伝えします。
旧帝国大学の入学式への対応
▽北海道大学
開催状況:中止
発表時期:2020年3月3日
▽東北大学
開催状況:変更(学内にて、学位記受領総代および答辞総代のみ出席)
発表時期:2020年3月2日
▽東京大学
開催状況:変更(各研究科・各学部の代表者のみ出席)
発表時期:2020年3月4日
▽名古屋大学
開催状況:中止
発表時期:2020年3月3日
▽京都大学
開催状況:中止(祝辞の動画配信)
発表時期:2020年3月10日
▽大阪大学
開催状況:変更(学部・研究科代表者のみの出席)
発表時期:2020年3月4日
▽九州大学
開催状況:変更(学部、大学院の代表者のみ出席)
発表時期:2020年3月10日
旧帝国大学に位置づけられる7校においては、3校が卒業式を中止しており、残りの4校も代表者のみが出席する最低限の形で卒業式が敢行されています。また、京都大学は卒業式の代案として祝辞を動画配信する対応を実施しています。
早慶上智における入学式への対応
▽早稲田大学
開催状況:中止
発表時期:2020年2月27日
▽慶應義塾大学
開催状況:中止
発表時期:2020年2月28日
▽上智大学
開催状況:変更→中止
発表時期:2020年2月28日→2020年3月13日
早慶上智における入学式に関する対応で特徴的なのが、2月末に3校とも卒業式に関するアナウンスが発表されているということです。また、上智大学のみ変更というアナウンスでしたが、3月13日に卒業式中止の発表がなされていました。
GMARCHにおける入学式への対応
▽明治大学
開催状況:中止
発表時期:2020年2月27日
▽青山学院大学
開催状況:中止
発表時期:2020年2月28日
▽立教大学
開催状況:中止
発表時期:2020年2月28日
▽中央大学
開催状況:中止
発表時期:2020年3月2日
▽法政大学
開催状況:中止
発表時期:2020年2月27日
▽学習院大学
開催状況:中止
発表時期:2020年3月2日
GMARCHにおいても軒並み卒業式は中止となっています。中央大学以外の5校が2月中に中止を発表するなど、比較的迅速な対応がなされています。
日東駒専における入学式への対応
▽日本大学
開催状況:変更(式典中止、学位記伝達のみ)
発表時期:2020年3月11日
▽東洋大学
開催状況:中止
発表時期:2020年2月27日
▽駒澤大学
開催状況:変更(式典中止、学位記の配付のみ)
発表時期:2020年3月10日
▽専修大学
開催状況:中止
発表時期:2020年2月28日
日東駒専では、2校が卒業式を中止していますが、残り2校が式典のみの中止で学位記の授与は実施しているのが特徴的です。また、学位記授与のみを行った2校は3月10日、11日でアナウンスを出していることから、直前まで可能な形での決行を考慮して進めていたと考えられます。
関関同立における入学式への対応
▽関西大学
開催状況:変更(式典中止、卒業証書・学位記の授与のみ)
発表時期:2020年3月4日
▽関西学院大学
開催状況:中止
発表時期:2020年2月27日
▽同志社大学
開催状況:変更(式典中止、卒業証書・学位記の授与のみ)
発表時期:2020年2月27日
▽立命館大学
開催状況:中止
発表時期:2020年2月27日
関関同立では、3校が2月27日に中止もしくは変更を発表しています。また、関西大学と同志社大学は卒業式典のみ中止とし、密な状況を避ける形での卒業証書および学位記の授与が実施されています。
産近甲龍における入学式への対応
▽京都産業大学
開催状況:変更(式典中止、卒業証書・学位記の授与のみ)
発表時期:2020年2月28日
▽近畿大学
開催状況:中止
発表時期:2020年2月25日
▽甲南大学
開催状況:変更(各学部・研究科の総代による学位記授与式およびオンライン配信)
発表時期:2020年2月28日
▽龍谷大学
開催状況:中止
発表時期:2020年2月28日
産近甲龍では、卒業式の中止および変更対応は全て2月中に行われていました。特に、甲南大学では、学位授与式をインターネットを通じたオンライン配信を行うなど、参加出来ない学生に対しても最大限の配慮を行っていました。
卒業式だけではなく、新社会人としての生活にも影響を与えるコロナショック
新型コロナウイルスによってもたらされたコロナショックは多くの大学の卒業式に影響を与えており、中止代表者のみの式典開催もしくは学位記の授与のみという形で実施がなされていました。大学の入学式は延期などの形での対応も一部で検討されていますが、卒業して次の進路に進む学生にとっては卒業式という晴れ舞台はなくなってしまっています。
加えて、コロナの余波は卒業生の次のステージにおいても影響を与え続けます。特に、新社会人にとっては入社式も中止や変更、オンラインやリモートワークを前提とした仕事のスタートなど人生に大きな影響がおよんでいます。
コロナショックの長期化が懸念される昨今においては、今回の反省を活かして、卒業式をオンライン対応するなどの対策が求められるのではないでしょうか。