
生活に欠かせないツールとなったSNS。その裏に潜む巧妙な詐欺について、理系インフルエンサーとして多方面で活躍するReina+Worldさんに取材しました。実際に被害にあったSNS詐欺について、体験談を交えて全貌をご紹介します。誰もが巻き込まれかねない複雑な手口を知り、大切な自分と周りの人を守るためのヒントとなれば幸いです。
嬉しいオファーの裏に潜む罠
2025年4月、多忙な時期を送っていたというレイナさん。InstagramのDMに届いたあるメッセージに目が止まりました。

【詐欺の始まり:甘い誘いと巧妙な仕掛け】
- 有名ブランドを名乗るDM
DMの内容は、有名コスメブランド『ジョー マローン ロンドン』の代理店を名乗るアカウントから、「新商品のPRを依頼したい」というオファーでした。レイナさんは文章に若干ぎこちない印象を受けたそうですが、外資系企業であることから、「こんなものかな」と、大きな問題には感じなかったそうです。
- LINEへの誘導と信頼構築
LINEで直接やり取りしたいと誘導され、担当者を名乗るアカウントと繋がりました。担当者は「野坂はるか」という違和感のない日本人名を名乗ります。担当者はレイナさんのフォロワー数や属性など、詳細なインサイト情報の説明を求め、特に「過去にInstagramで投稿している動画の質が高いので、商品PRに関しても動画で投稿してほしい」と話しました。知りたがる情報や依頼が具体的で、プロの広報担当者とのやり取りのようでした。
- 現実的なギャランティと短納期の提示
提示されたギャランティは20〜30万円。レイナさんは「ブランド規模から考えるとPR案件としては現実的な金額でした」と語ります。そして担当者は「急いでいるので、商品が届いたらすぐに投稿を作ってほしい」と念を押しました。
- 本物のような契約プロセス
依頼の説明後、非常にしっかりとした日本語の電子契約書が提示され、さらに電子署名を求められました。

投稿動画を確認して褒められ、細かな審査を経て、リアリティのあるギャラを提示され、契約書を交わしたことで、レイナさんは「完全に正規の案件だと信用してしまいました」と語ります。「急いでいるという言葉も信じ込んで『頑張らなきゃ』と焦ってしまいました」と振り返ります。
終わらない「エラー」と膨らむ「保証金」
信頼関係が築かれたところで、詐欺師は本命の罠を仕掛けます。それが「ギャラは先払い」という甘い言葉と、「自社プラットフォームからの振込」という指示でした。
【詐欺の進行:巧妙な手口で金銭を要求】
- 「ギャラは先払い」の言葉
担当者から「ギャランティは先払いしたい」と告げられ、商品を送付するPR案件では一般的にあり得ないことなので疑問を感じつつも、さまざまなパターンがあるうちのひとつとして受け入れたといいます。
- 「自社プラットフォーム」への誘導
ギャランティの受け取り方法として、銀行振込ではなく「自社プラットフォームへ振り込んであるので、そこから受け取ってほしい」と指示されます。指示されたURLを確認すると、まるでフリーランス向けの案件紹介サイトのように作りこまれていたそうです。複数のタイトルが並ぶ中から指定のPR案件を選択するという仕組みでした。
- 「振込エラー」と「口座番号の間違い」
プラットフォームでPR案件を選択し、指示通りに銀行口座を登録するとエラーが発生しました。「入力された口座番号を間違えている」と指摘され、レイナさんは、慌てていた自分のミスだと思って再登録を依頼してしまいます。しかし、後に「おそらく詐欺師側が意図的に口座番号を誤らせる仕組みだと思います」とレイナさんは推測しています。
- 「信用度低下」と「保証金」の要求
再登録依頼の返信で、レイナさんはプラットフォームのカスタマーセンターから「入力ミスによって信用度が下がったため、保証金を支払う必要がある。ギャランティと一緒に返金する」と要求されます。ギャランティの半額にあたる15万円を支払うも、もちろん入金はありませんでした。
- 繰り返される要求と被害の拡大
さらに別のエラーが発生したと伝えられ、再び「信用度低下」を理由に、今度はギャランティの全額を保証金として支払うよう要求されます。その後も様々な理由づけでエラーが続き、レイナさんは最終的に合計68万円を支払ってしまったのです。

- 詐欺の確信
何度も保証金を支払わされ、さすがにおかしいと感じたレイナさん。遂には「金融庁が関わるトラブルに巻き込まれたので150万円を支払え」といった、高額すぎる請求と「金融庁」という明らかに不自然なワードを突きつけられ、ようやく詐欺だと確信しました。
レイナさんが何度も支払いに応じてしまったことの要因として、詐欺師グループが「PR案件を依頼したクライアント」と「ギャランティを引き渡すプラットフォーム」という2組に分かれているように演じていたことが大きかったといえます。
クライアントを名乗る側は、常に「こちらは既にギャランティをプラットフォームへ振り込んだのだから、早く引き出して案件を進めてほしい」と追い立てます。プラットフォームを名乗る側は「あなたがミスをしているから振込みを進められない」と、両者で立て続けに連絡を送り、どんどん焦ってしまうような仕組みになっていたのです。
被害から学ぶ、詐欺を見抜くための3つのポイント
レイナさんの体験から得られる教訓は、インフルエンサーだけでなく、SNSを利用する全員にとって重要です。
【要注意!詐欺を見抜く3つのポイント】
- 日本語の不自然さ(AI風のぎこちなさ)
些細な違和感でも見過ごさないようにしましょう。翻訳ツールを使ったような不自然な日本語は、危険信号です。
- 金銭の先払い要求
商品が到着する前や、仕事が完了する前に「保証金」「手数料」などの名目で支払いを要求されたら、ほぼ間違いなく詐欺だと思ってください。
- 独自プラットフォームへの誘導
正規の銀行振込を避け「独自のプラットフォーム」や「提携サイト」での入金・送金を促された場合、すぐに警戒してください。特に、そこに銀行口座情報や個人情報を入力するのは非常に危険です。

気の毒な結果となりながらも、「巧妙すぎて笑ってしまった」「メンタルが強いので私は大丈夫」と語るレイナさん。彼女は現在も警察や消費者センターとやり取りを続け、被害の解決を進めています。そして、詐欺被害の経験を警告として発信する提案をうけてくださいました。
最後に、このレポートが多くの方の身を守る一助となることを願っています。もし不審な連絡を受けたら、一人で抱え込まず、弁護士や消費生活センターに相談してください。
関連タグ




