
「おうちでマーラータン」が仕掛ける新たな食文化
ネクスターホールディングスのグループ会社である「おうちでマーラータン株式会社」は、「おうちでマーラータン」および「頂マーラータン」のブランド事業を展開しています。D2C事業を核としつつ、BtoB事業として温浴施設への卸販売も積極的に進めている同社の取締役であり、事業統括責任者として「頂マーラータン」の販路拡大を担う二瓶寛史氏に、その戦略と熱い想いを伺いました。
味もルーツも深みがある「頂マーラータン」
新大久保に店舗を構える「頂マーラータン」。数あるマーラータンブランドの中で、二瓶氏が考えるブランドの魅力は何でしょうか?
「『和製マーラータン』という独自のアイデンティティを確立しているのが、大きな強みです。和風だしとスパイスの絶妙なバランスのスープは、他では味わえません。麺も、春雨発祥の地である奈良県で作られたオリジナル極太生春雨を使用するなど、徹底的にこだわっています。なにより、何度食べてもぜんぜん飽きがこない。自分自身がファンになれる美味しさが、やはり最大の魅力です」
「頂マーラータン」の独自の味を作り上げたのは、創業者である齋藤悠氏です。齋藤氏は、国内で最初に人気を博したマーラータン専門店「七宝麻辣湯」で、本店の味を日本人向けにアレンジを務めた経験を持ちます。
「『七宝麻辣湯』を展開する石神氏は、ラーメンに特化した著名なフードライターです。本場中国で200軒以上マーラータンを食べ歩き研究を重ねた後、2007年に上海の七宝老街にある人気店『七宝老街愛情麻辣湯』から暖簾分けする形で渋谷に同店を創業しました。齋藤氏は現場の技術責任者のような形でレシピの調整に関わり、本場のこってりスパイシーでパワフルな味を、国内でも親しみやすい風味にローカライズして、多くのお客様に評価されました」
齋藤氏のチャレンジは更に続き、理想の美味しさを追求した独自の和製マーラータン開発に挑みます。「頂マーラータン」のスープには、国産鶏と、トビウオを使った高級だし「飛魚出汁(あごだし)」が使われており、風味と旨味の絶妙なバランスを生み出しています。
「実は、齋藤氏のご実家は、2023年のラーメン総選挙で日本一に輝いた山形県酒田市の有名店『東軒(あずまけん)』なんです。『東軒』の売りは、上品でスッキリとした甘みと、深い味わいがある飛魚出汁スープです。斎藤氏は独自の修業時代を経て、鮮魚系ラーメンの先駆的な店である『麺屋 海神』の立ち上げに携わる際にも、魚介出汁のスープを研究して『あら炊き塩らぁめん』を創り出しています。日本人好みのマーラータンを作ろうと理想の味わいを追求した折にも、やはり飛魚出汁のスープが最適だという結論になったようです」
「頂マーラータン」のスープに使われている30種類以上のスパイスは、その多くが漢方薬でも使われ、食で健康をつくる「医食同源」の思想に通じています。そこへ日本独自の「出汁」文化を重ね、深く掘り下げた先に生まれたのが、秘伝のスープでした。
ネクスターホールディングスと「頂マーラータン」の関係性
ネクスターホールディングスと「頂マーラータン」の繋がりは、社長の細田悠巨氏がその味に惚れ込んだことに端を発します。
「細田がお父様の入院見舞い帰りに立ち寄ったのが『頂マーラータン』でした。心に染み入るような優しい味わいに感動して、このマーラータンを全国へ展開したいと思ったそうです。そこで『おうちでマーラータン』の企画が立ち上がりました」
店舗スタッフも「頂マーラータン」の味に惚れ込んで入社する人が多いというエピソードからも、その美味しさが伺えます。
「純粋にこの味が好きだからという理由で人が集まるんです。人の心を動かして、行動させるマーラータンって凄いですよね(笑)。営業先の試食会でも、必ず『美味しい』と喜んでいただけるので、自信を持って営業できます」
2021年に冷凍食品「おうちでマーラータン」を販売開始。しかし、当初は苦労も多かったといいます。
「僕たちが事業を始めた3年ほど前は、マーラータン自体の認知度がまだ低く、市場も決して大きくはありませんでした。より身近に感じてもらおうと、時には『スープ春雨』と言い換えてみるなど、様々な工夫を凝らしました。どうすればこの美味しさを多くの方に知ってもらえるか、試行錯誤の日々でしたね」
転機となったのは、中国資本の有名チェーン店が国内出店を進めたことと、人気テレビ番組で特集されたことでした。いわゆる“ガチ中華”といった本格的な中華料理ブームも相まって、マーラータン人気が過熱し、「おうちでマーラータン」のEC売上も飛躍的に伸びました。
サウナ後の食事専用?!「サ飯マーラータン」開発秘話
「サ飯マーラータン」は、温浴施設へのBtoB卸事業を推進するために開発された特別メニューです。
「マーラータンの盛り上がりとともに、注目したのがサウナ人気と『サ飯』というキーワードでした。サウナで発汗によって失われる成分に着目し、それらを補給できる食材をふんだんに使った、温浴施設向けの特別メニュー『サ飯マーラータン』を開発したのです」
たくさんの食材の中からトッピングを自由に選べるマーラータンは、好みの味付けだけでなく、美容促進や栄養補給など、目的に合わせた効能を望める組み合わせを考えられるという特長があります。
「『頂マーラータン』の特製スープ開発には10年もの歳月が費やされていますが、サウナの後に特化した『サ飯マーラータン』に相応しいトッピング選びやスパイスの調整は2週間ほどで完成できました。大きな特長は、アオサをたっぷりと使用していること。サウナ後に失われるナトリウム、カリウム、マグネシウム、ミネラルを効率的に補給できます。更に通常よりも使用するスパイスを増量し、新陳代謝を更に促し、サウナとの相乗効果を高めます。美味しいだけでなく、健康促進にも貢献できる『サ飯』として、温浴施設のヘルシーなイメージ向上にも繋がるという狙いがあります」
これからの戦略と将来の展開
素材の産地にこだわり、品質にこだわる「頂マーラータン」は、どうしても原価が高くなり、提供店での価格設定も上がるという課題を抱えています。そこで、販売戦略にはネクスターホールディングスが強みとするインフルエンサーマーケティングを活用したといいます。
「250名ものアンバサダーを起用し、各SNSで発信してもらうことで、総フォロワー数1500万人にリーチすることができました。ダイエット、辛い物好き、美容、グルメなど、様々なジャンルのオピニオンリーダーがそれぞれの視点から情報を発信することで、より深く、より広い層に『頂マーラータン』の魅力を伝えることができます。また、温浴施設へ導入された折には、アンバサダーに施設全体を体験して、率直な感想を寄せていただくことで、高い宣伝効果が期待できます」
今後の展開として、二瓶氏は「頂マーラータンの湯」というユニークな企画を明かしました。
「おかげさまで、『サ飯マーラータン』の売り上げは好調と言えます。導入していただいている所沢の大型スパ施設『Onsen Balcony King & Queen』では、1日で500食出る日もあるほど。多くのお客様にご支持いただいています。更に、マーラータンブームを追い風にして、温泉運営会社と温浴施設運営会社との連携を強化できる施策として、『サ飯マーラータン』を提供する施設で、『頂マーラータンの湯』という企画を考えています。食べるだけでなく、温泉に入れても身体に良いスパイスを配合した入浴剤を開発して、マーラータンのように”煮込まれる”ホットなお風呂を作ります。企業がコラボする『○○の湯』は人気イベントとして定着しつつあるので、その一つとして楽しんでいただきたいですね」
さらに、将来的な展開について伺うと、大きな夢について話してくださいました。
「今後の大きな課題として、売上増加に伴う工場の生産ラインの改善が挙げられます。こだわりの国産食材を使用していることや、独特なスープの生産方法をとっているため、大規模生産にはあまり向いていないという側面もありますが、ブランドとして最も優先すべき事項である『味を守ること』を第一に置きながら、生産体制の強化を図っていく方針です。将来的には、新宿発の和製マーラータンとして東京名物になり、そしてクールジャパンのひとつとして海外展開したり、さらには本場である中国市場への逆輸入もできたらいいな、と考えています」
まとめ
「おうちでマーラータン」は、こだわりの味と革新的な戦略で、新たな食文化を創造しようとしています。「頂マーラータン」の唯一無二の美味しさと品質、二瓶氏の熱意とネクスターのマーケティング力が融合し、可能性をさらに広げていくことでしょう。
おうちでマーラータン株式会社 取締役 二瓶 寛史(ニヘイヒロフミ)
2021年度の会社設立時より、事業統括責任者として「頂マーラータン」の販路拡大を、ToB・ToCともに担当している。
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